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【読書】水村美苗の『私小説』が描く海外で生きる者の孤独


 

shishosetsu - 1

先日自宅のインターネットがつながらなくなるトラブルに見舞われた私は、久しぶりに紙の本を開きました。

その中の一冊が、長らく放置していた『私小説―from left to right (ちくま文庫)』です。

『私小説―from left to right』の主人公、美苗は12歳で親の仕事の都合でアメリカ東海岸に家族で移り住み、フランス文学の研究で名門大学の大学院に進みます。

物語は、ニューヨークのアパートで一人暮らしをして、建築関連のアルバイトをしながら生活をする姉の奈苗と美苗の長電話での会話を中心に進んでいきます。

姉妹の愚痴や世間話、思い出話、そして美苗の回想が物語を淡々と進めていくものの、小さなエピソードにはっとさせられます。そして、全体に流れる海外で生きる日本人姉妹の孤独と物悲しさ。

20年住んで、英語でのコミュニケーションにもまったく問題なく、アメリカ人もうらやむような名門大学に進んでも、なお「私はここにそぐわない」と感じざるを得ない美苗の20年間の回想。

現地のアメリカ人にいじめられる、差別されるというような経験ではなく、いかに自分が「東洋人」であるかを感じるのは日常のささいな出来事で、それはあからさまな差別発言・行為よりもむしろ無意識な「東洋人に対する西欧人の視線」だったりもします。

著者の年齢から考えると、60年代、70年代のアメリカ東海岸の状況が描かれているのだと思います。

現地に溶け込もう、現地の考え方や文化を理解しようとすればするほど、日本的な文化との摩擦が生じていく経験は私もいくらか体験しています。

そんな異文化に生きる居心地の悪さ、難しさを感じたことがある方であれば、少なからず『私小説』の美苗・奈苗姉妹に共感するところがあるはずです。

✴︎

それから、アメリカ社会の複雑な差別の様相を描いた本としては、『非色 (角川文庫)』や『ハーレムの熱い日々 (講談社文庫)』もおすすめです。

『私小説―from left to right』を手に取るきっかけになった、ハワイ在住のアメリカ研究者の吉原真里さんの『ドット・コム・ラヴァーズ ネットで出会うアメリカの女と男 (中公新書)』もおすすめです。吉原さんはこの本の中で、ご自身にとって『私小説』がいかにご自身にとって大切な位置付けであるかを書かれています。

少女時代の何年間をアメリカで過ごし、日本の大学を卒業したあとにアメリカに渡った吉原さんもまた、『私小説』で描かれる姉妹の孤独に深く共感したのではないかと想像してます。

See you! 🙂

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