Serial Foreigner

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ベルリンに来て2年が経ち、現地のスタートアップを取材し始めた私が学んだこと


 

ケルンで開催された Pirate Camp にて

ベルリンに来たのはちょうど2年前のことだ。それから紆余曲折を経て、今年の春から私はベルリンのスタートアップシーンについて書くようになった。手探り状態で進んで来た中で、学んだことを書いてみる。

日本を発つ前日にそれまで勤めていた会社を辞め、ベルリンのテーゲル空港に降り立ったのは2012年9月26日のことだ。その日を境に、フリーランスの翻訳者・ライターとして活動を始めた私は、そのあといくつかの紆余曲折を経て、今年の春からベルリンのスタートアップシーンについて少しずつ書き始めるようになった。

2年前、ベルリンに来た当初は知り合いがゼロだった私も、今では気の置けない仲間たちと過ごす時間がだいぶ増えた。

とはいえ、最初は模索する日々の連続だった。特にスタートアップ関連の取材をするときは、周囲の雰囲気に圧倒され、どうすればもっとコミュニティに溶け込めるのか、よく悩んでいた。もっと自分を積極的にアピールしなければと、気負うばかりだった。

そんな私が過去半年間のなかでスタートアップのコミュニティから学んだこと、そしてこれから海外のスタートアップに関わりたいと考えている人にとって重要だと思うことについて書いてみたい。個人の性格やバックグラウンドによって、なにが障壁となるかは大きく異なるので、以下に書くことはすべて私個人の主観に基づく感想だ。

アジア人であり女性であることへの引け目

私は自分がアジア人であること、女性であることに引け目を感じ、どこか一歩引き下がっていた。以前1年ほど生活していたカナダのトロントに比べて、ベルリンはアジア系の人口の比率が低く、そのため人種的な疎外感を多少感じていたこともある。

レイシズムが動機の事件が起きることもある。それから、セクシズムという問題も。男性がマジョリティを占めるスタートアップシーンにおいて、女性に対する差別的な発言や行動はゼロではない。さらにドイツ人女性と比較すれば、アジア人女性は「大人しい」「従順」といったイメージを抱かれやすく、そうしたステレオタイプがストレスになることもある。

レイシズム、セクシズムという問題が確かに存在し、それに対して声を上げる必要がある一方で、最終的に気付いたのは自分をただの世間の差別の「被害者」「犠牲者」とみなすべきではないということだ。なぜなら、ありのままの自分を尊重してくれる人もまた多くいることに気付いたからだ。

私は連続外国人(serial foreigner)

たとえば、アプリ検索アプリを開発するスタートアップ Xyo のファウンダーであり、友人のマテウス・クジスコフスキーは、あるとき私にこんな言葉をかけてくれた。

「僕も君も serial foreigner なんだ。僕も南アフリカやアメリカとか、海外で一時期暮らしていたから、異なる文化圏でなにかを成し遂げようとすることがどんなに大変かよく分かる。君がこうして欧州までやってきて、まったく違う文化に飛び込んだ勇気を尊敬する」

連続起業家ならぬ連続外国人(serial foreigner)。その言葉は私に新たなアイデンティティを与えてくれた。そして、マテウスの話を聞きながら、外国人だからこそ、異なる文化を渡り歩いているからこそ、見えるもの、できることがあるということに気付かされた。

実際、アジアの果ての島国から海を越えて欧州まで来たことについて「勇気がある」という言葉をかけてくれたのは、彼だけではない。そして、「敢えて来た」からこそ相手の関心を惹き付け、耳を傾けてもらえることも多くある。

「君がいいと思うものをつくればいい」

今、私はライター・翻訳の仕事と平行して、Capsule.fm という人工パーソナリティが音楽やニュースといったオーディオコンテンツを届けてくれるオーディオアプリを開発するスタートアップに関わっている。私に与えられたミッションは、日本語のパーソナリティをつくるというものだ。

ファウンダーのエスペン・シスタッドはノルウェー人で、2011年にオスロからベルリンに移住して、真にモバイルなオーディオメディアをつくるというビジョンを掲げて、Capsule.fmを立ち上げた(参照:「5年後にはオーディオメディアが中心になる」Capsule.fmファウンダーが語る、マシンと人間のコミュニケーションの未来)。

ある日、エスペンと私は日本語のパーソナリティのキャラクターづくりについて話し合った。私は日本人のなかでこのアプリを好んで使ってくれるのは、仮想キャラクターへのなじみのある、サブカルチャーが好きな若い男性ではないかと考えた。たとえば「初音ミク」を好むようなユーザー層だ。私はそうした自分の推測について、初音ミクのことも引用しながら彼にに伝えた。

エスペンは私に聞いた。
「君も初音ミクみたいなキャラクターをつくりたいと思う?」
「いや違う。どちらかというともっと気の強いキャラクターをつくりたい。ダイレクトで皮肉やユーモアも言うような性格にしたい」
私は深く考えずに即答した。
「…でも、そんなんじゃユーザーが引くよね。アプリ売れないか」
彼は言った。
「いや、目がキラキラしたかわいいキャラクターをつくる必要なんてない。君がいいと思うキャラクターをつくればいい」

私の提案に賛成してくれたのは、ビジネス的な観点からではなく、チームの仲間に全面的な信頼を与えるというスタートアップ的なカルチャーに基づく態度だと、理解している。こうして信頼を与えてもらったことは、私にとって大きな自信になり、またさらにチームにコミットをしようというモチベーションになった。

「女性」に対する視線の文化的違い

ありのままの自分でいれば、日本ではネガティブに捉えられることも多い一方で、こちらでは逆にポジティブに捉えられることが多かった。

それはたとえば、なにかに対して批判的なことを言う、反論をする、皮肉を言う、斜めなユーモアを言うというような態度だ。なにかに対する鋭い批判や怒りを率直に言葉や態度に表せば、日本だと「キツい女」とみなされる一方で、こちらでは「おもしろい」と思ってもらえることの方が多い。

「君の意見を聞きたい」「もっと質問して」「絶対に気を使わないでほしい」
こうした言葉をかけられることが増えるにつれて、アジア人だから、女性だからといった固定観念に勝手にしばられていたのは自分だったことに気付いた。私のそうしたクローズドなマインドを開いてくれたのは、他ならぬスタートアップコミュニティの中で出会った仲間たちだ。

謙虚さについて

「将来なにをしたいの? 起業って面白いからやってみなよ」「やりたいことをやりまくればいいじゃんよ。なんで怖じ気づくの」スタートアップコミュニティの友人から、よくこんな言葉をかけられる。

「私なんかには〜〜はできない」と思うことは、結構ある。自分の経験やスキルを客観的に評価することが苦手だ。もしくは、日本社会に存在する謙虚さに対する美徳が影響しているのかもしれない。

だがある日、日本人男性の友人に「それはただ、責任を逃れたいだけだからだよ」と言われたとき、覚醒した。自分に対する低い自己評価は、謙遜ではなく責任からの逃げなのだと。

そして、欲しいものに対して貪欲に手を伸ばし、それをつかもうとする人を近くに見ながら、そうか私も勇気を出して、それをつかもうとただ手を伸ばしてみればいいんだと気付いたのは、本当に最近のことだ。

そんなわけで、私はもっと貪欲に、自分のやりたいことに対して本気でやってみようと思っている。そして、それを実行に移す場としては、今のところベルリンが最適な場所だと感じている。

ベルリンのスタートアップ界に入り込むのに重要だと思うこと

最後に、これからベルリンでスタートアップを立ち上げたい、スタートアップに関わりたいという意欲のある方々に向けて、僭越ながら、重要だと思うことを簡単に挙げてみたい。

1.英語力
スタートアップシーンの公用語は英語だ。ほぼ全イベントが英語で開催され、スタートアップのオフィス内の公用語も英語であることが多い。

英語力を身につけていくのは、根気のいるプロセスだと思う。私も帰国子女ではなく、ベルリンに渡る前はカナダで1年生活した経験しかなかったため、結構苦労してきた。それでも、現在はネットとテクノロジーのおかげで、フィリピン英会話など、安く効率的に学べる環境が、10年前と比較すればずっと整っている。地道にコツコツと学んでいけば、ある日すごい地点に達することができると信じながら、私も日々勉強している。

また、やりたいことによっても必要な英語力は異なる。たとえば私はライターとして、英語でインタビューしたり、英語記事を読んだり、イベントに参加したりするため、かなり高い英語力が必要になる。だが、エンジニアやデザイナーであれば、英語力よりも自分の専門分野のスキルの高さが求められて当然だ。もちろん、英語力が高いにこしたことはないが、自分のやりたいことに合わせて、目標を設定すればいいと思う。

2.なにか一つの大きな強み
プログラミング、デザイン、事業開発、マーケティング、翻訳、執筆などなど…なにか一つの突出した強みがあれば、スタートアップ界で重宝される人材になれると思う。ジェネラリストよりもスペシャリストの方が、断然求めらる。

3.勇気と柔軟さ
イベントに参加してみる、憧れの起業家にコンタクトをとってみる、など勇気を出して行動してみることで、次のステップにつながることが多いと感じる。そして、日本の常識やルールにとらわれず、現地の文化やコミュニケーション方法について柔軟に対応することも重要だと思う。

「スタートアップのコミュニティに関わっていれば、遅かれ早かれ、自分のスタートアップを立ち上げたくなるよ」

つい最近、あるファウンダーから言われた言葉だ。それだけ、スタートアップのコミュニティは中毒性がある。さまざまな形でイノベーションをもたらそうとしている起業家たち、そして彼らの成功をサポートしたいと願う人々がオーガニックにつながっているコミュニティには、形容しがたい不思議な魅力がある。

今の時点で、私は特に何かを成し遂げたわけでもないが、今置かれている環境を飛び出して何か新しいことをやってみたいと思っている人にとって、多少の役に立つのではないかと思い、今回こうして思うことをまとめてみた。

ベルリンに来た2年前、ベルリンでスタートアップの取材をするようになるとは全く想像もしていなかった。フリーランスで仕事をすることがどういうことなのかも、まったく分かっていなかった。

多くの失敗と多少の遠回りを経て、そして今もまだトライ&エラーを繰り返す日々だけれど、ベルリンに来てから今日までの2年間は、今までの人生で最高に面白い2年間だったと思っている。そして、これからの日々は、さらにエキサイティングなものになるだろうとワクワクしている。

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